2023年2月4日(土)、京都では珍しい大雪の名残がありつつ、寒さがゆるんだこの日。『庭職人と庭園スタディー☆2022』の最終回が行われました。
まずは洋館で無鄰菴の職人によるレクチャー。最終回のテーマは『無作為の作意』です。
無鄰菴のお庭の芝生は、五月に野花が美しく咲き誇ります。その様子はとても自然。でもこの自然さこそ、職人のお手入れの賜物なのです。これを『無作為の作意』と呼びます。
『無作為の作意』とは、一見、手入れをする職人の作為が感じられないほど、自然に仕上げること。まるで人の手が入っていないかのごとく自然な庭を職人は目指します。そのために、冬のうちに行う作業は大きく分けて2つ。
①施肥
②芝生の手入れ
①施肥
施肥とは、植物に堆肥をやること。冬の時期の施肥は『寒肥』と呼ばれます。ただし無鄰菴では、日頃から植物それぞれの状態を見極め、必要なタイミングで施肥を行っているため寒肥を行いません。無鄰菴の景観を守るためにも、積極的な施肥はしないとのことでした。施肥についてのレクチャーが終わると、いよいよ庭へ。
②芝生の手入れ
5月に野花が美しく咲き乱れるように、芝生の手入れをします。芝生の手入れは3段階。
A.熊手で不要なコケと芝葉片の除去
B.野花の間引き
C.手ぼうきで仕上げ掃除
熊手を使って、芝の間に増えたハイゴケや芝の枯れ葉などを掻き出す『サッチ』という作業。土の上に枯れ葉や刈りカスがたまった層=『サッチ』を除去することで、土の内部の蒸れや枯れを防ぎ、カビやキノコ、病害虫の発生源になるのを防ぐ大切な作業です。
まずは熊手の使い方。参加者のみなさんが驚いたのは、その力具合。熊手がしなるくらいの力をこめて、芝地を掻くんです。やってみるとかなりの重労働。次第に参加者さんから「暑い!」との声があがりはじめました。
サッチが終わると、野花の間引き。5月に咲き誇ってほしい野花の芽は残しつつ、増えすぎては困る野花を抜く作業です。職人の手本を見て、作業開始。取りたいもの、残したいものを印刷した紙を見ながら、参加者さんたちは恐る恐る手を動かしていました。
野花の間引きに集中していると、あっという間。作業を仕上げる時間に。最後は手ぼうきで、芝の間に残ったものをキレイに取り去ります。この手ぼうきの使い方にもコツが。時々回転させて接地面を変えることで、手ぼうきにクセがつきにくく、長く使い続けることができます。お庭を美しく手入れするには、道具の使い方を知るのも大切です。
手ぼうきで集めたものは、『てみ』と呼ばれる、柄のない大きなチリトリで回収。熊手での作業時から、少し荒れた様相を呈していた芝地が、みるみる整って、スッキリとした芝地に!自然で美しいお庭を作るのは、このような職人の地道な作業。庭園スタディー後に見るお庭は、以前よりもぐっと胸に迫る美しさでした。
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