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さらさら通信

さらさらとは。無鄰菴の施主 山縣有朋が詠んだ歌「さらくと木がくれつたひゆく水の流れの末に魚のとぶみゆ」にちなんでいます。
無鄰菴を途切れることなく流れるせせらぎのように、ここでの出会いが庭園を未来に育む流れとなりますように、名づけました。

2017年 10-11月号

2017年 10-11月号
無鄰菴は国の名勝に指定された近代日本庭園を代表するお庭です。
明治29年に元勲 山縣有朋が東山を主山に、当時できたばかりの琵琶湖疏水を引き入れた庭園の基本構想を七代目小川治兵衛に伝え造営しました。
そんな無鄰菴のお庭は、有朋の作庭意図にのっとった保存管理指針のもとに修復や修理が行われています。今回ご紹介するのは、園路の修復です。
歩むごとに景色をかえる無鄰菴のお庭の奥の方、もみじの林に池につづく一本の小径があります。
ここは今まで封鎖され歩くことができませんでしたが、今回の修復で池際まで下りていけるようになりました。
園路の先まで歩いてみれば、庭園の大切な要素がいくつも目に入ってきます。紅葉の季節、もみじにかこまれた新しい景色がまたひとつ、よみがえりました。

庭師のまなざし

2017年 10-11月号
庭師のとっておきの紅葉の見方。
そんなことを聞いたら、きっと秋がもっと楽しくなるでしょう。
無鄰菴の母屋から芝地に向かって伸びる園路。その沢とびを越えたあたりにちょっと脇に入る小さな小径があります。通りかかったら奥まで歩んでみてください。そこから庭園の一番むこうの滝をながめると、随分と奥行きを感じる景色が広がります。奥行きの秘密は、滝の前に紅葉が何重にもかさなって枝を伸ばしているから。空間的な奥行きのみならず、幾多の過ぎ去った紅葉の季節という時間の奥行きさえも感じられます。その景色は、一つ一つの枝が景色の中で持つ役割をしっかりとわきまえているからこそ、演出できているのです。これぞ庭師の技。他にも気づけば、手前に紅葉などの枝を配することで、奥行きを感じさせる空間構成がいくつもみられます。これは実は無鄰菴に限らず、日本庭園の庭木を扱う大切な手法のひとつなんです。
秋の日のお庭散策で、ちょっと気にしてみてください。庭園を訪れる楽しみが、また一つ増えました。

2017年 8-9月号

京都の街中の暑さを忘れて、プライベート感覚でひっそりと佇むお庭はいかが?
ここは南禅寺草川町。 涼やかに打ち水をされた門をくぐれば、迎えてくれるのは近代日本庭園の傑作、無鄰菴。明治時代の元勲、山縣有朋の別荘には往時のままに、ゆったりと時が流れています。ていねいに手入れをされた日本庭園では、明るい笑顔のスタッフが「今日もようこそ」と丁寧にお出迎え。美しく広がる芝生の庭園は、いずれ苔のしっとりとひそやかな小径に変わり、滝の端には深山の景色が広がります。
母屋で一休みして眺めると、晩夏の日差しの中の東山が、秋の風を運んできます。目を閉じて、足元を流れるせせらぎを感じれば、心の中まで洗われるような涼やかさ。
極上のリラックスができるお庭、夏のおわりの思い出に訪れてみませんか。

2017年 10-11月号
無鄰菴には毎日庭師が入って、お手入れをしています。ふと見ると昨日よりもすっきりと、ととのった顔立ちの景色が広がっていることに気づいた時は、その「しごと」に景色を預かることの責任を感じます。
今回ご紹介するしごとは、松の支柱の入れ替え。見事に枝を張り出した松が、自らの重みで折れないように、丸太で支えられているのをご覧になったことがあるでしょう。無鄰菴にも、そんな支柱に支えられた松があります。支柱も脇役とはいえ、やはりその庭に馴染むものを使いたいのが庭師のこころ。
先日、その支柱を天然木に入れ替える作業を行いました。自然の造形ですから、支えるに適した長さや太さのものを探してくるところから始まります。しっかりと無駄のないように長さをはかり枝の下にさしこみます。終えてみると、やはり景色はぐっと統一感を増して、風格を漂わせていました。この違いへのこだわり、ぜひ無鄰菴で味わってみてください

無鄰菴パートナーズ講座【無鄰菴× パートナー講師の特別座談会】
京都の若手文化人と無鄰菴が手を携えてつくる、庭に集うプログラムの楽しみ

アニカ(広報) 無鄰菴パートナーズ講座にはどんな特徴があるのでしょうか?

太田(無鄰菴管理事務所 所長) かつて庭園はお茶やお香や文学の世界が相互乗り入れする文化の交差点でした。私たちは名勝無鄰菴を文化財として保護しつつ利活用するというあり方に挑戦したいと考えています。

山田(無鄰菴 プログラムディレクター) もうひとつの特徴は、先生方と無鄰菴が「無鄰菴でやる意味」を一緒に考え、プログラム内容を無鄰菴向けにイチから企画している点です。今回の開講にあたり、ティアスさんとお話しして特に興味深く感じたのは、茶道やお茶という伝統的なある意味スタイルが確立されたものをあくまでもご自身の「ヨーロッパ出身で茶道を身につけたティアスさん」の目線で捉えていらっしゃるところです。日本茶を語るにしても、マニュアルがあった上での話ではなく、常にご自身の身体を使って確認をしている。基礎的な技能がしっかりとあり、さらにその上で型を打ち破るような自由な目線で自ら新しく知識を獲得されてこられている。それを開かれた文化の交差点としての庭、無鄰菴で、ティアスさんの目線でお客様に伝えていただいたら、日本文化を囲む面白いソサエティができてくるのではないか、と思っていました。

2017年 8-9月号

ティアスさん、改めて日本茶に興味を持ったきっかけをお聞かせいただけますか?

ティアス(無鄰菴 パートナー講師) はい。まず日本に興味を持ったきっかけは、ベルギーの高校時代の頃、日本の小説を通じてです。…大学時代は部屋に畳を敷き、文机を置いて勉強していました(笑)。そんな中で「煎茶」というものがあると知って、はじめは知識もなく鉄瓶に茶葉を淹れて煮出していましたが、それでも日本のお茶は美味しいと思っていたんです。そして日本の大学に留学し、今の師匠を紹介していただいて武家茶道を習得しました。

アニカ これまで活動されてきた場所と無鄰菴とでは、どういう違いがありますか。
ティアス この開放感は他にはないですね。お茶室は全部閉め切るのでお庭の中にいるのを忘れることもあるくらいですが、母屋二階は広々とした景色もあって、外にいるようだけど中であるというところは無鄰菴にしかないと思います。私は完全に野外の鴨川でお茶をする時もあるのですが、庭園でするのとはやはり違います。

山田 私たちは無鄰菴でするということに凄くこだわって、ティアスさんにもただデモンストレーションをするというだけでない高い要求していると思うのですが、その辺りはどうでしょう。

ティアス それほど注文が多いとは感じていませんし、逆にそうあるべきだと思います。何かをするにあたって、適当にではなく、ちゃんとした考えがあって、こうなって欲しいという希望もあった上でないと意味がないのかなと思います。ここは京都の指定文化財でもありますし、古い歴史がある場所の中ですることになるのでそれなりの姿勢を持たないといけないと思います。

アニカ 無鄰菴とティアスさんの方針がマッチしているのはすごく感じます。講座はどんな内容と雰囲気なのでしょうか?

ティアス テーマは日本の風土や生活の中で作られてきた日本茶を中心に、そこから見える人の営みです。もちろん味わいも大切です。毎回リラックスして皆さんと一緒に学んでいます。会話を基本に進めており、友達の家を訪ねたような和気藹々とした雰囲気で皆でやっていますね。

アニカ オープンな空間がオープンな集いに導いているのですね。

山田 一回で終わらないというところにも意味があって、何回もここに集まって交流が生まれ、新たなソサエティができていくというのが目標です。参加者同士が知り合って楽しんでいただいた結果、無鄰菴の外でも日本庭園に集うことの素晴らしさについて話していただくいうのがひとつ。もうひとつは、イベントをきっかけにして、この無鄰菴のメンバーになっていただきたいと願っています。それは個々人バラバラでは難しいことで、まず顔を知っている人同志の空間ができて、そこに対する愛情が出てくると思うんです。その人のつながりこそが、未来へ庭園をはぐくむ原動力になると考えます。

アニカ ただ綺麗な場所というだけでなく、出会いの場所であるということですね。

山田 はい。「あの時のあのこと」という記憶があれば見え方は全然変わって、生きた場所になってくるのではないでしょうか。日本では文化施設は場所貸し的な運営になっていることが多いですが、例えばドイツの劇場だと劇場側にプログラム構成においての主体性がある。施設側がどういう目的で何をしようとしているのか、ある程度はっきりスタンスを示すことによって、立場を超えて対話が生まれ、より多様な展開が期待できると考えています。

太田 そうですね。無鄰菴では「山縣有朋が愛でていた日常」を体感できる場所にしたいということがベースにあります。それに基づき、プログラムを発信していく時も、日常感があって楽しく、尚且つ中身のあるものを発信していきたいです。より多くの人にもっと生き生きと日本庭園を楽しめる、そういう場になればと思っています。

PDFファイル

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