日本語EnglishChinese

約100年前の景色を取り戻した、滝流れのお手入れ。

いよいよ深緑に向けて庭が動き出す季節になりました。今回は、2025年度に修理工事を行った無鄰菴の滝流れと、滝のお手入れについてレポートします!

滝の一番上から庭園を見る、激レアショット!注:通常非公開です。

無鄰菴は、その流れの表現の多彩さで知られています。特に滝から、滝壺、そして急流を模した流れ、そしておだやかな池へと至る一連の造作は秀逸です。

実は、2026年度末に、滝壺のすぐ下流の護岸に茂っていた水生植物や苔を、往時の古写真をもとに取り除き、かつての石組があらわな姿を取り戻す工事を行いました。
こちらが昭和12年の古写真の様子です。なんだかスッキリとしています。

『日本庭園史圖鑑第十九卷 明治大正昭和時代一』発行:昭和十二年四月十日

それもそのはず。
奥に滝がありますが、画面中央の沢飛び石より手前の水面には何もありません。
アングルが180度逆になってしまうのですが、近年の水面はこんな感じ。

多くの水生植物や拳大の石が水面にあり、多様な景色を作り出しています。一見これらの要素は、より自然らしい景色を目指した山縣有朋の庭園観とマッチしているように思えますが、昭和12年の時点では存在していなかったことがわかります。

今回の修理では、完全に戻してしまうのではなく、主に滝流れの護岸に繁茂しすぎた植物を取り除き、往時の姿に戻すことになりました。

例えば以下の2つの写真で、向かって右側の護岸を見比べていただくと、2枚目の修理工事の後では、石の様子があらわなことがお分かりいただけるかと思います。

もう少しアップで見ると、水生植物が取り除かれた後の石の間に苔がはり、流れの景色が広がっていることがわかります。ちょうど帽子をかぶった庭師の出口さんが指差しているあたりです。

さて、この日のお手入れでは、滝の一番上部から、池の手前までの流れ底の泥や落ち葉を掃き出す作業を行いました。

まずは滝の上にある取水口から。

清らかな琵琶湖疏水の流れがみるみるにごっていきます。

それもそのはず。流れ底にはびっしりと藻が繁殖し、それらが大量の砂や泥をキャッチして滞留させてしまうのです。しかし、底のモルタルをつよく擦りすぎると痛めてしまい、漏水の原因になるので、ほどほどに。

どんどん掻き出しながら三段の滝の二段目におります。足元が、非常に、ぬめります。
出口さんが掻き出してキャッチしきれない落ち葉などは、下流のもう一人の若手庭師がキャッチします。

園路から見るとこんな様子。

出口さん曰く、特に気をつけている点が、正面から滝を見たときに目立つ水の落ち口に藻がたまらないようにすること。要所を押さえて清涼感を演出していきます。

最後に滝壺。結構深いです。時々長靴が水没するそうです…。

広くなって流れがよく見えるようになったこともあり、また泥の溜まるスピードが速いので週1回はこの作業を行っているとのこと。
なかなかの作業量です。

修理箇所の護岸近くのお手入れを行う様子

無鄰菴に入った流れは、そのまま西隣の飄亭さんのお庭に入ります。そのことを意識しておじゃまにならないような曜日、時間帯に作業しています。

出口さんは語ります。

「長い時間によって醸成した景色も良かったが、今回100年ぶりに護岸の景色が戻ったことには新らしい意味があると思います。新たに滝壺の下で流れが広がり一部分かれていたことや、広い面積で敷石のような造作があったこともわかったので、今後もそれらの点を美しく味わっていただけるように育成していきます。」と。

爽やかな春に見られた、名勝庭園らしいお手入れでした。
次回もお楽しみに!

庭をはぐくむ公式メールマガジン 庭園メールニュース

登録する

お出かけに役立つお庭の最新情報、イベント情報、庭師のコラムなど、お届け!特別イベントにもご招待。