京都の暑い夏のさなかでも、朝は比較的涼しく独特の風情があります。
縁側に映る木漏れ日を楽しむことができるのも、東向きの無鄰菴では早朝ならでは。
普段は味わっていただけないこの時間帯の良さを、涼やかなおりんの音色とともに味わってもらおうと開催したのがこの早朝おりんイベントです。
2024年7月の早朝おりんイベント初日は、前の晩に雨が降ったことで比較的気温も低く、お庭の緑も普段にもまして青々としていました。
まずは八畳間にて、おりん奏者の村木先生より演奏についての解説。
ジワジワと鳴く蝉の声、涼やかなせせらぎの音など環境音も取り込んでの演奏であり、まるで音のお風呂に浸かるかのように、おりんの音色に包まれる感覚をお楽しみいただきたいとの説明のあと、最初の演奏が始まります。
残念ながら演奏用に設置された風鈴が揺れるほどではありませんでしたが、清く澄んだおりんの音色が広がるなか、時折かすかに通る風は、日中の暑気からは考えられないくらい心地のよいものでした。
一度目の演奏のあとは、軽く佐波理おりんの制作元である南條工房さんについてのお話。
ちょうど祇園祭の期間中ということもあり、祇園祭で巡行する鉾のひとつ、大船鉾との関係などが話題にのぼりました。
そして、音に集中していただいた1回目とは趣向を変え、今度はリラックスして聞いてくださいとの案内のあと、2回目の演奏。
演奏そのものの雰囲気も変わり、おりんの音同士が相互に影響しあう波紋のような音色に。
ふくらみ、重なり合って広がるゆたかなおりんの響きに、目をつぶりゆったりと聞き入る方が多数みられました。
最後に、おりんの音を耳だけでなく手からも感じていただきたいと、演奏体験の時間に。
先生が演奏で使っていたのと同じタイプのおりんや囃子鉦などを、実際に皆様で鳴らしていただきました。
しかし何といっても、参加者の方々の一番人気は大きな水入りおりん。
本来は水を入れるものではないのですが、音の振動が視覚的にもわかりやすいようにと夏のイベント限定で実施してくださっています。
最初は村木先生の実演。一度軽く叩いておりんを鳴らしたあと、ばちでぐるぐると胴を擦ると、音は次第にわんわんと大きく響きだし、誰も触れていないはずの中のお水が激しく跳ねはじめます。
うまく水を跳ねさせるには”音を掴む”ためのコツがいるとのことだったのですが、何人めかの挑戦者の男性が見事水を跳ねさせることに成功。
周囲もおおいに盛り上がり、拍手があがりました。
八畳間でのイベントのあとは、十畳間に移ってカフェタイム。
この日のお茶とお菓子は、冷たい煎茶と甘春堂様の干錦玉。
お菓子はもちろんですが、冷煎茶も一晩じっくり水だしする必要があるため、通常はお出しできない特別メニューです。
演奏体験用のおりんや囃子鉦も十畳間に移動し、引き続き自由に演奏いただける状態に。
最後は皆様お庭を散策されたり、再度演奏にチャレンジしたり、先生に質問をされたりと、思い思いに早朝の無鄰菴を満喫されたご様子でした。
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