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庭師インタビュー:冬のお庭の魅力

「冬枯れ」のイメージがある冬のお庭。なんとなく寂しい感覚があり、あまり魅力を感じられない方が多いかもしれません。しかし、日本庭園はただの自然ではなく、人の手が生み出したものだからこそ、冬のお庭には大きな魅力があります。

今回は、無鄰菴の担当庭師・出口健太さんに冬のお庭の魅力やお手入れについて伺いました。

ーー 冬のお庭の特徴を伺う前に、お庭の構成物である植物にとって、冬はどのような時期なのでしょうか?

出口さん(以下敬称略):冬は植物の成長が止まる時期です。手入れする側から見れば、一年で最も手のかからない季節だと言えます。

ーー 冬のお庭と他の季節とでは、お手入れにどのようなちがいがありますか。

出口:春から秋にかけては植物の成長が旺盛なので、枝の剪定や刈り込み、芝刈りや草引きを常にしなければいけません。イタチごっこのような状態です。毎日、手入れに入っていればもう少し作業が追いつくとは思いますが、無鄰菴の場合、僕が他にも担当施設があるためなかなか難しい状況です。

ーー 植物の成長の早さに作業が追いつかないんですね。

出口:はい。冬は植物の成長が止まるおかげで作業が追いつきますから、お庭の美しさのグレードをあげる繊細な手入れができるんです。例えば、低木の落ち葉や枯れ葉も丁寧にとることができますし、普段追いつかなかった細やかな手入れをじっくりすることができます。落葉樹は葉が落ちているので枝ぶりがよく見え、手入れがしやすいです。普段から携わっている職人の人数でもちがうとは思いますが、無鄰菴の場合は、より手をかけて美しくなった姿が見られる季節だと言えます。

ーー そう聞くと、冬のお庭を見る目が変わります。ということは、冬の無鄰菴の魅力は一段と手入れが行き届いた状態にあるということでしょうか。

出口:それもありますが、無鄰菴の場合は木々の葉が落ちることで、石組など庭の骨格がはっきりと見て取れるのも魅力だと思います。それと、無鄰菴の特徴のひとつが開放的な芝生です。芝が枯れて明るい色合いになったところを短く刈ると、芝地のラインがくっきりとして空間がより引き締まった印象になりますし、さっぱりとして開放感が増します。削ぎ落されて凛とした庭の表情が楽しめるので、冬の庭が一番好きです。

ーー 無鄰菴の本質的な魅力が輝くのが、冬なんですね。その観点は、庭師の仕事をされているからこそのように感じます。

出口:そうですね。この仕事をしているからだと思います。以前仕事をしていた地元は雪国で、庭は4月くらいまでずっと雪で覆われていました。年末に雪吊りや手入れをしたら、それでおしまいという感じで。

ーー 4月まで!その間はお仕事ができないということでしょうか。

出口:はい。雪が積もっている以上、庭師というか造園の仕事はほとんどありません。でも、京都はあまり雪が降りませんし、降っても庭が雪で埋まることがないので、冬ならではの庭の姿を感じることができます。

ーー そのご経験があるからこそ、冬のお庭の魅力が味わえて、お手入れも行き届く京都の冬のお庭がお好きなんですね。京都でもたまに積雪がありますが、その際のお手入れはどうされていますか。

出口:触れないようにしています。京都の積雪量であれば、解けるのを待って手入れをすれば大丈夫です。

ーー 読者の方の中に自宅の庭の手入れ方法を知りたい方も多いと思うのですが、冬のお庭のお手入れポイントを教えてください。

出口:やはり植物の成長が落ち着いた季節なので、掃除に力を入れるのがいいと思います。それと、落葉樹と針葉樹の剪定も。とくに落葉樹は葉が落ちて枝葉の骨格がわかりやすくなっているので、整えやすいです。反対に常緑樹は剪定に適した時季ではないので、手入れをしすぎないようにしてください。

インタビューはまだ続きますが、今回はここまで。次回は愛用の仕事道具などについての話をお届けします。

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