もはや無鄰菴の名物ともいえる、無料10分ガイド。毎時2回、ご入場いただいた方ならどなたでもお聴きいただけます。
全国の名勝庭園でも専門家のトレーニングを受けた施設所属の人材が、対人で常時無料ガイドを提供するのは珍しいこと。今回はその育成の裏側をお伝えします!
聞き手:ガイド育成で最も重視していることは何ですか?
重岡:ガイドを担当する人それぞれの個性を生かすことです。そしてお客様に新しい魅力を発見をしていただくことです。研修では、何を最も伝えたいかに意識的になってもらい、その部分を伸ばしてもらうようにしています。
聞き手:なるほど、しかしそれではガイドによって、違った内容をご提供してしまうことになりませんか?
重岡:もちろん、基本的にお伝えすべき事項を間違いなく発話できるようにすることが大前提ですので、ガイドテキストはしっかり作っています。そこでは文化財に指定された理由から有朋の作庭時のエピソードまで、短時間で要所を網羅できるようになっています。またテキストは最新の研究成果を交えながら常に更新しています。
録音ガイドではなく対人ガイドである一番のメリットは、ガイド本人が無鄰菴に対して感じている魅力を直接お伝えできることです。
リピーターの方がお越しになった場合、同じ録音ガイドであれば二度と聞かないでしょう。しかし、対人ガイドであれば話す人によって重点の置き方が異なるので、もう一度聞いてみようかな、と思っていただけます。
それにより、以前は気が付かなかった無鄰菴の魅力を、新たに発見していただくきっかけになることでしょう。
聞き手:ガイド担当者にはどんな人がいるのでしょうか?
重岡:それはもう様々です。学生、主婦の方、副業の方などがいます。子どもがいる人は子どもにもわかりやすく説明できるように留意されたりしており、人材にバラエティがあることはむしろ強みだと捉えています。魅力の伝え方にもバラエティが出て、より多面的なガイドメンバーを構成することができます。
聞き手:対人ガイドを有料で提供しないのはなぜでしょうか?
重岡:無鄰菴は国指定名勝として、保存と活用を両立させることが一つの使命です。ですから、無鄰菴にお越しいただいた方に、なぜ名勝に指定されて公費を用いて保存をしているのかをわかり易くお伝えすることが、保存に貢献する活用の第一歩だと考えています。
そのためにはまず聞いていただかなくてはいけない。録音ガイドよりも、対人ガイドの方が聞いていただける確立が高いですし、お伝えしたことも記憶に残りやすいと考えています。
聞き手:10分無料ガイドは、保存と活用をむすぶ架け橋のようなものだったのですね。
重岡:無鄰菴のガイドスタッフは、長く勤める方もあれば、学生さんのように人生のある時期の間だけ勤める方もあります。どのような方であっても、ガイドを経験したことによって、その後の人生においても文化財の保存と活用に資する視点を持つ人材に育って無鄰菴を卒業していってくれています。
今後も、わかりやすくバラエティに富んだ10分無料ガイドの育成に励んでいきたいと思います。
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