日本語EnglishChinese

モミジの木に見る、景色を守り育てること

陽春の無鄰菴は、とてもカラフルです。
ミツバツツジの濃いピンク、ユキヤナギの白、クサボケのオレンジ、そして木々の鮮やかな緑。特にモミジの黄緑は、常緑樹の深い緑の中で特に目を引きます。

流れの向こう側、左下の刈込からモチツツジやヤマツツジも顔を出しています

モミジといえば紅葉、または初夏の青モミジを思い浮かべる方が多いかと思いますが、この時期のモミジは花を咲かせます。

この赤くかわいらしい花ですが、見頃は1週間もないとのことです。
タイミングよく見つけられた方は、近くからも遠くからも愛でてみてくださいね。

さてこのモミジですが、近年の温暖化の影響を受け、ダメージを受けてしまうものが少なくありません。ダメージを大きく受けてしまった木は、残念ながら切ることになります。

切り株の上から苔をかぶせている様子

これをおぎなうため、今年の2月にイロハモミジ1本・オオモミジ2本の計3本を補植しました。

補植したモミジ3本
植替え作業

それから約2ヶ月が経過し、春になり葉が芽吹いてきたのが今になります。

イロハモミジ
オオモミジ
これから葉が開くオオモミジの枝。イロハモミジに比べ、葉が開くのがやや遅い

「モミジなどの落葉樹は、落葉してから春まで休眠をしているので、冬が一番植替えに適しています。今こうやって芽吹いてきましたが、そもそもモミジ自体が暑さに強くありません。無鄰菴のような高木が少なく、水面の照り返しをうけるような環境下ではことさら弱りやすいです。なので、今後うまく育つかどうか、見守っていく必要があります。モミジは、今後3年かけて計10本を補植していく予定です」と無鄰菴担当庭師の出口は話します。
無鄰菴の美しいモミジの景色は、このようなお手入れによって守られているのです。

****

刻々と変化する季節や気候、それを読み、それに合わせたお手入れ。
造営当初から引き継がれてきたお庭の個性そのものを変化させることなく、現在の環境に合わせ柔軟に対応しながら、今日でも文化財の本質的価値を味わえる空間を実現すること。

このように長い時間をかけてそのお庭にしかない景色をつくっていくことを、子をはぐくむことになぞらえて庭園の「フォスタリング」と呼んでいます。

来る2025年6月に無鄰菴の指定管理者である植彌加藤造園社長・加藤友規が、この「フォスタリング」を冠した書籍を出版することとなりました。無鄰菴はもちろんのことですが、他の庭園についてもさまざまなエピソードを交えてご紹介しておりますので、お手に取っていただければと思います。
また6月6日には無鄰菴にて出版記念イベント(書籍付き)を開催いたします。ぜひお越しくださいませ。

庭をはぐくむ公式メールマガジン 庭園メールニュース

登録する

お出かけに役立つお庭の最新情報、イベント情報、庭師のコラムなど、お届け!特別イベントにもご招待。