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園路沿い中低木の剪定

8月ももう終わりとはいえ、まだまだ涼しくなる気配がありません。

このところ毎年のように過去一番暑いといわれている気がしますが、気象庁によると今年は8月以降も気温は平年より高く残暑も長引くとの予想です。

暑さが続き、雨が降ると植物の生長も著しいということで、この日のお手入れは園路沿いのトビ剪定でした。

トビとは樹木の不要枝の一つである飛び枝(徒長枝)のこと。徒長枝とは本年、前年生枝の中で、他の枝よりとくに長く伸びる枝で、樹形を乱す要因となります。

園路沿いのカシのトビ剪定は、今年に入ってもう3回目。

近年の温暖化のせいか夏が長引き、暑い時期が増えているため、植物の生長する期間が伸びていると無鄰菴担当庭師の出口は感じています。例年秋になれば生長が落ち着き樹木のトビ剪定は不要でしたが、去年は10月もトビ剪定をおこないました。

黄色い枝が新しく伸びたトビです

これまで慣例となっていたお庭のお手入れのスケジュールや方法も、新たな気候にあわせて見直す必要がでてきています。

あちらもこちらも綺麗にしたい、それでも1日に使える時間は有限。ということで、今は場所ごとに植物の状態にあわせて手入れのタイミングを見直しています。

さて園路沿いの樹木、園路を通行される方の目線の高さの枝葉が乱れているとお庭を眺めていても気になってしまいます。ですので園路沿いの樹木の手入れは優先度が高い場所。基本的な剪定はなされているものの、園路沿いのカシは手入れ回数を増やして対応しています。

トビはまだ伸びたばかりで固まっていない場合は、手で摘んでも大丈夫。固まってしまったものは鋏を使い、目線の高さの枝葉の乱れがないよう調整します。

手入れ後は、なるほど視界の中央がスッキリした印象です。

目線の高さの枝葉の次に大切なのは、やはり目線上に存在感があるもの。

茶室入口わきに立つチャノキは、入口という視対象となる場所にあるうえに、伸びた枝が飛石にさしかかっていました。

茶室入口わきのために枝が延びているのが目につきます

園路に伸びた枝の剪定で、出口が心がけていることはスッキリさせすぎないこと。

「園路から離れるように、あたらないようにと、枝を切りすぎないようにしています。茶室前のチャノキであれば、飛石にあたるかあたらないかぐらいが良いかなと思っています。枝葉が近ければ、植物をよく見ることもできますし、雰囲気がでます。とは言え、園路が狭くなったり、歩かれる方に枝葉があたってしまうと歩きにくくなるので、歩ける幅を見極めつつ調整しています」

飛石とのバランスを調整して仕上げた姿

茶室北側のヒサカキの低木も、歩く範囲を調整しつつ剪定しました。

少しだけ園路にさしかかるように枝を残します

さらに、園路の目線上で目立っていたカナメモチの足元のひこばえ(樹木の根元または根元に近い根から発生する小枝です)の剪定もおこないました。

既存のカナメモチは傾斜が強く、また老木化しているため、いずれ倒木や枯損することが懸念されます。

今あるひこばえが成長し、いずれ元の樹木の差し替え候補になるかもしれないため、3本立っているひこばえのうち1本だけ残すお手入れとしました。

あえて残したひこばえ

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お庭の使われ方、見え方、将来。

何を残すか、どう見せるか、多方面から手入れのあり方を考えて、日々悩みながらすすめております。

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