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夏と秋のはざまで:芝生と護岸石を景色としてみせるための手作業

樹木や低木から、草や苔に至るまで、夏の季節のあらゆる植栽の要素は庭園内にすぐに繁茂し、手入れもその分たいへんになります。捉え方によっては、本来野趣あふれる景色で知られる無鄰菴にとって、夏は最も適した季節と言えるかもしれません。しかし、庭園が野趣あふれているということは、どういうことなのでしょうか?例えば、明治の京都の庭園の写真を集めた『京華林泉帖』には、明治42(1909)年6月に撮影されたこのような写真が掲載されています。

芝生に生い茂る、手つかずのように見える野草がまるで夏の到来を告げてくれるかのようです。

この猛烈な成長に対応するため、無鄰菴の庭師はその庭園の個性を育みながらも、手入れの時間を短縮しなければなりません。その対策の一つに、芝生を春に一度だけ短く刈り込み、その後は必要な場合にのみ軽く刈り揃え、意図的に草を長く残す方法があります。刈込後は、庭園の低木や地被植物を手作業で除草することで、無鄰菴の自然らしさを保っています。

無鄰菴の庭師にとって、これは時間を節約するための技でもありますが、それと同時に庭園管理の基本原理を垣間見せるものでもあります。つまり、完璧を追求するのではなく、庭園を全体として見た時に一部の不自然さが目立たないようにすることが肝心なのです。そのためには、特に庭園の園路から見える景色など、来場者の目線で目立つエリアの手入れを優先することが大切です。

無鄰菴の庭師は、特に芝生に点在するクサボケに注力しています。クサボケの茂みが無鄰菴の自然主義的な里山の景色を演出する一方、東山の借景を妨げないよう低く剪定することもまた重要です。春になると、これらの低木は緑の葉で覆われ、その下に隠れて小さな果実が実り始めます。そして、夏の終わりには、落葉を始め、ふっくらとした黄緑色の果実が姿を現します。

それでは、無鄰菴の庭師が芝生と低木をどのように手入れしているか見てみましょう。

手箕にあっという間に草が積もっていきます。

クサボケの自然さを損なうことなく、低木を整理し、すっきりさせます。作業前には、草や苔に覆われてごちゃごちゃと生い茂っているように見えたクサボケは、このようなすっきりした姿に変わりました。

無鄰菴の流れ周辺も、その野趣あふれる自然美を鑑賞する上で極めて重要です。そのため、もう一つの重要な点は水辺の護岸石です。池周辺と主屋前の流れのエリアで、芝生と低木を重点的に手入れした後、下の写真のように景観が劇的に変化しました。

主屋前から見える護岸石の雑草を手で抜いていきます。

その結果、芝生にスッキリした様子が戻ります。 庭園の奥の水景も同様です。

夏の終わりには、池の北東側は高く生い茂る草によって覆われます。

手入れした結果、整然としながらも自然な趣きを帯びた景色が再び庭園に蘇ります。

しかし、これまでご紹介した通り、庭園管理において最も重要なのは、庭を全体として見た場合に違和感を感じさせないことです。それでは、無鄰菴の主屋の前から見た庭の全体像をビフォーアフターで確認しましょう。

9月9日 (作業中)

9月10日 (作業後)

まるで一日のうちに、夏の荒々しい熱気が過ぎ去り、秋の清々しい落ち着きに変わったかのようです。このドラマチックな季節の移り変わりを支えているのは、庭師の確かな目と熟練した腕に他なりません。無鄰菴は再び、私たちを新たな季節に招いてくれます。

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