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葉むしりと職人の道具たち

夏の暑さも過ぎ去り、季節は急ぎ足で冬へと向かおうとしています。
そんな変化のなかでも、無鄰菴のお手入れが途切れることはありません。

本日のお手入れは玄関前の松。
秋の紅葉シーズンに向けて、葉むしりが行われていました。

作業途中の松。作業の終わった上端とこれからの下枝。

「葉むしり」とは、松の古葉を手でむしって落とし、すっきりとした姿に整える作業です。
一般的には冬のお手入れとされていますが、無鄰菴では紅葉シーズン中の作業を避けるため、モミジがまだ青さを残している今の時期に葉むしりを行っています。

作業をする職人の足元に目をやると、古葉にまじって枝が落ちており、時折、ぱちん、ぱちんという剪定鋏の音も聞こえていました。

葉むしりとあわせて、剪定も行っているのですか?
出口
はい、そうです。
葉むしりは一枝一枝を手で整えるため、大変時間のかかる作業です。
ですので、まずは混みあいすぎている枝、通行の邪魔になるような枝を落とし、おおまかな形を整えてから作業するほうが効率が良くなります。
あらかじめ剪定する枝の例
出口
おおまかな形が整ったら、こうして残った枝の古葉をむしり落とします。
その樹木全体の葉の濃淡はもちろん、庭園全体とのバランスをみながら作業しています。
古葉をむしり落とす様子
そういえば、職人の皆さんは樹上でも作業ができるよう、腰に道具を吊っていますよね。
剪定をするとき、それぞれどんなふうに使い分けているんですか?
出口
作業道具にはひとそれぞれ好みがありますし、担当する庭園の違いによる部分もあるので、何かひとつ間違いのない正解がある、というものではありません。

そのうえでの話になりますが、私は剪定鋏で作業を済ませることが多いですね。
この松のように繊細な剪定が必要な植栽には刃先が細い鋏を、硬い樹種や太い枝には刃の幅が厚い鋏を、というように使い分けています。
出口の剪定鋏。左が刃先の細いもの、右が厚いもの。
小さいのこぎりを吊っている方も多いですが、そちらはあまり使わないのでしょうか?
出口
手ノコですね。もっと太い枝になってくると使いますよ。
私は手ノコを使用する場合も、小回りのきく小ぶりなもので済ませることが多いです。
もっと大ぶりな手ノコも所有していますが、私は大きな木の伐採準備のような限られた場面でしか使いません。
出口の手ノコ。小さいほうが普段使い用。
出口
他には、少し変わったものだと、長柄つきののこぎりもあります。
こちらは高木作業用ですね。
長柄つき鋸。柄が伸縮し、長さを調整できる。

作業の手を止めて道具とその使い分けを紹介していただきましたが、本格的な紅葉シーズンまでの残り時間はあとわずか。この松も、本日中には仕上げてしまう予定です。

これからの紅葉を待ちわびている方もそうでない方も、ご来場の際はよろしければ松にも目を向けてみてください。新しい発見や味わいを見つけていただけるかもしれません。

無鄰菴にて、皆様をお待ちしております。

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