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京都の和菓子づくりの秘訣

今回は、無鄰菴のイベントやカフェのお菓子を作っていただいている千本玉壽軒のご主人 元島真弥さんに、2月1日に行う山縣有朋公命日企画「山茶忌(つばきき)」でのお菓子を題材に、お話をうかがいました!

お菓子のかたちはどんなプロセスで考案するのでしょう?

ご依頼をいただいたときは、ご要望をお聞きして大まかなイメージをまずラフに絵を描いてみます。
山茶忌のお菓子では、有朋公の質素な趣味に合わせて、大輪の椿というよりも、曙椿のようなつぼみがまだ開き切っていない椿をイメージしています。
まずは、わかりやすいと思うので、実演してみましょう。

こちらが出来上がったもの。

ものすごく可愛いです!お菓子がどんどん生き生きとしてくる様子がよくわかりました!

お菓子はある程度の数をスピード感を持って作ることが大切です。例えば一つのお菓子に5分もかけていたら乾いてしまいますし、美味しくなくなってしまいます。洗練された基本形があって、そこにアレンジを加えます。
お菓子にはお店ごとに受け継がれてきた基本形があると思います。包餡(ほうあん)という餡を包む技術は同じですが、どうカタチにしていくかはお店によって違います。ご依頼をいただいたときに色々試しながら、新しい表現を発見することもあります。
うちの場合は口伝で伝わっている形がほとんどです。絵を描いて伝えるよりも、実際に作った方が体に入ります。

どんな道具をお使いなのでしょうか?

これは花びらの線を表現する「ささら」です。竹でできています。お抹茶を点てる茶筅を使うこともあります。道具には、基本的に自然素材を使っています。

写真右側が「ささら」。

人工素材だと、綺麗すぎるんです。多少ばらつきのある方が自然に馴染みます。一つずつ微妙に異なった印象を生み出すこともできます。材料としては、京都ではあんに小麦粉や米粉を入れて蒸した上で、こねつけたものを使います。だから「こなし」。関東では「ねりきり」といって、ねったあんについたお餅を入れてさらに練ったもので、少し粘り気があります。京都は「こなし」です。

ー 地方によってお菓子も変わるのですね。

はい。地方によって和菓子の表現も異なってきます。関東はより具体的な表現が多いです。京都はどちらかというと抽象的で、ぼやっとした感じが多い。
なんでかというと関東には職人の文化があり、より技術を見せる表現が多いように思います。京都は根にお茶の文化があって、お茶事ができるようにみんな頑張っている。

お茶事の流れは、初炭があって、その次は懐石、懐石の最後に主菓子が何も言われずぽっと出てきて、それを食べたら中立で外に出て、茶室でメインのお濃茶をいただく。そのときにはじめてお菓子の銘が伝えられる。それでお菓子の意図がわかって、亭主と客のコミュニケーションが生まれ、座に一体感がでる。

そういうところをすごく大事にしているから、お客さんも勉強が必要だし、作る方も工夫を凝らしていく、というところがベースにあると思います。

想像力の幅を持たせるお菓子、なのですね。

そうですね。お客さんそれぞれが銘を聞いて、少しずつ違った自分なりのイメージがもてて、その上で世界観が共有できるような場づくりですね。
お菓子は、人と人をつなぐ役割を担っていると思います。
ですから作るときにはお菓子の背景を考えた上で、シンプルに必要最低限の表現をすることが大事だと思います。

ー ご主人はどのようにして、この道に入られたのでしょうか?

私は大学を卒業してからサラリーマンを経てお店に入りました。他の職人さんに動いてもらうために、自分自身が職人になる必要がありました。
京都でもお店ごとにカラーがあるので、お客さんも「これだったらこのお店」というイメージを持っています。そういったカラーやイメージを、技術を吸収しながら学んでいました。

千本玉壽軒は、昔は生菓子よりもお干菓子の方が知られていました。お菓子と切っても切り離せないお茶の稽古に私が通うようになって、お茶席や先生のご意見を聞いていくうちに、今の千本玉壽軒の方向性が生まれてきたと思います。
今は、私の息子や職長も、私が通っていた稽古場に通っています。これからもつないでいってくれたらと思っています。

その名の通り、千本通りに面した千本玉壽軒さんのお店。看板は、天龍寺のお坊さんの筆になるもの

お忙しい中、京都のお菓子づくりについて深くまなばせていただき、ありがとうございます!
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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