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お正月の準備

来る新年に向け、無鄰菴もお正月の準備をしています。

お正月といえば、しめ縄や鏡餅、門松などを連想される方が多いと思います。
無鄰菴では、しめ縄を玄関に、鏡餅を10畳間に、そして門松ではなく「根引松(ねびきまつ)」を母屋の入口に飾っています。

根引松とは、根がついたままの若松をさします。青々として枯れることのないマツに、地に足をしっかりつけて過ごす願いをこめた根がついており、京都を中心とした関西地域ではお正月の縁起物とされています。これを家屋の玄関に飾ることで、年神様に「お正月の準備ができたので、お越しください」とお伝えするのです。
無鄰菴では、文化財保護の観点から、玄関柱にくぎを打ち込むことができません。そのため、みなさまが靴を脱ぎ履きされる母屋入口の格子に飾っています。

このお正月の準備は、実はお月見が終わる頃から始まっています。11月半ばまでに予算を鑑み、根引松やしめ縄を含む注文を一括でおこないます。12月初頭に花の卸売業者がおこなう「松市」にて根引松の相場や生育具合を確認しつつ、12月末に届く実際の品を待つ、というのが大まか流れになります。
以前は12月13日の「事始め」にあわせて買い出しなどをおこなっていましたが、近年は予約などの関係上、早めに準備を進めています。

実際に届いたしめ縄と根引松(昨年分)

根引松の軸には和紙を巻き、5本の水引で留めています。水引の色や結び方については諸説あるようですが、無鄰菴では結び切りで、水引の濃い色(紅白ならば紅、金銀ならば金)が向かって右側にくるように飾っています。

飾り方としては、門松と同じように左右一対で飾ります。入り口に向かって左に雄松(おまつ)・雌松(めまつ)を配置することが理想のようですが、これにも諸説あるようです。雄松をクロマツ・雌松をアカマツとすることが多いようですが、無鄰菴では特に区別はしていません。ただし、届いた根引松を見比べて大きさに差があれば、大ぶりのものを左側に、小ぶりのものを右側に配置するようにしています。
そして軸の色と馴染む、茶色の細いフラワーワイヤーで2箇所固定しています。

設置が完了したようす

しつらえ担当の荒木は、こう話します。

「無鄰菴の正月しつらえを担当するとなった当初は、玄関前に門松を飾ることを検討しました。ただ無鄰菴の玄関前はやや斜面になっているので、安定性があまりよくありません。また『京都らしさ』を感じさせたいというところから、根引松を採用しました。実際しつらえるにあたって、祇園・宮川町の正月準備を見て回り勉強しました。
根引松が京都を含む関西近郊ではやった理由は、大きく二つあると感じています。ひとつは、間口の狭い家が立ち並ぶ実情を鑑みたのではないかということ。もうひとつは、関東より「松の内」の期間が長く、より長持ちする根付きの松が適していたのではないかということです」

今回は根引松やしめ縄を中心にご紹介をしましたが、母屋内の各所にお正月のしつらえを準備してお待ちしております。しつらえ等は鏡餅を除き、小正月である1月15日までご覧いただけます。
ぜひ足をお運びくださいませ。

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