
お庭の樹木の手入れでは、何を基準に行うものでしょうか。
生き物である樹木を健やかに育てていくことはもちろんですが、個々のお庭の個性を踏まえ一本一本樹木それぞれに求められる役割や姿を目指して、幹枝の形や枝葉の量を調整し、樹形を整えていくことも大切になります。
どの場所で、どういう見せ方をするのか。その樹木の特性は何か、日陰が好きなのか、剪定に強いのか。いつ、お手入れをするのか。
例え同じ樹種であっても、見せ方によって目指す姿は異なります。
無鄰菴のイロハモミジだと、滝のそばにあるものと建物のそばにあるものでは、お手入れの仕方や考え方は変わってくるでしょう。
それでは、境界の樹木はどうでしょうか。
無鄰菴敷地境界の樹木は、建物から滝と東山を眺める視線の周辺景観を構成しています。
東山の稜線を隠さず庭と外をつなげること、敷地外の建物が見えないようにすることといった庭からの眺めの他に考えるべきなのが、外からの視点です。

写真では枝が外壁をわずかに超えているようにみえますが、伸びすぎてしまうと周辺を歩かれる方の通行の妨げや安全面に影響を及ぼす可能性があります。そこで無鄰菴北側の境界樹木の剪定を3年ぶりに行うこととなりました。
目指す姿は、越境枝を整えつつ、東山の稜線を維持すること、母屋から敷地外の建物が遮蔽されていることです。
さらに樹種と剪定の時期も踏まえて、お手入れを検討します。
無鄰菴の庭の外周に位置する境界樹木は、カシやシイが大半を占めています。これらの樹木は、生長がはやく、比較的剪定にも耐えます。3月下旬には萌芽して新しい枝を伸ばしていくことでしょう。
成長することを考えた場合、敷地境界となる塀の直線上で整えるのではなく、敷地のもっと内側、伸びた枝が調度塀に差し掛かる程度まで剪定することが望ましい姿です。しかしながら現在は冬期であり休眠期のため、強い剪定をすると位置と枝葉によっては新芽を吹かない可能性があります。そこで縮められる範囲まで仁王門通りに面した外側から剪定し、3月に再度調整することとしました。

お手入れの際は、切りすぎると枝葉のレイヤーが薄くなり、母屋から外側の景色が透けて見えてしまうため、外側を切りつつ庭の中からの眺めも確かめて枝葉の濃さを調整します。また、枝についている葉を全て落としてしまうと枯死してしまうため、萌芽してほしい枝には葉を必ず残すようにします。


本来であれば3月、春先が剪定をするには最適期ですが、今回は臨時剪定。
枯死しないように、傷まないように、時期により剪定の強度を変えるのも大事な手法です。

剪定した枝を降ろす際に、歩行者にあたらないよう二人一組で気をつけることも必要です。どんどん枝は作業とともに歩道に集積するため、ある程度量がたまると紐でくくってまとめて運び出します。
運搬するという作業にも庭師の一工夫。枝の切断した根元と葉先をそろえるのではなく、枝ごとに交互に重ねることで、運搬する枝の嵩が減り、まとまりやすくなります。


日々の作業のちょっとしたことの工夫のが積み重ねも、効率よくお手入れを進めるために必要な工程です。あとは木に登って枝を切り、下から、庭園の中から仕上がりを確認して調整することの繰り返しです。
今回は塀の外側から可能な範囲で越境枝の剪定を行いましたが、次のステップではつまっていると圧迫感や枝の乱れを感じさせてしまう内側の樹木の剪定を進めていく予定です。

お手入れの終わった境界樹木
お庭の中で大きく目立つ場所ではないかもしれませんが、お庭を構成する一つ一つの要素がそれぞれに役割を果たして、無鄰菴の景観を美しく形作っています。ご来場の際は、お庭のさまざまな場所にもぜひ目をとめてみてください。
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