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景色に寄り添う石造物のみせかた

周りの植栽手入れ後 姿を現した石燈籠

無鄰菴は、里山の風景や小川そのもののような躍動的な流れをもつ自然主義的な新しい庭園観により造営されたお庭です。
母屋からは主山とする東山と峰から流れ落ちてきた水が野をつたってくるかのような雄大な眺めを楽しむことができます。こうした自然の風景が魅力的な無鄰菴のお庭ですが、庭のあちこちに景色をひきたてるための添景物として石造品があることに注目したことはあるでしょうか。

今回お手入れするのは表門をくぐって右手に見える、石造品近くに植栽されたクチナシです。

クチナシ剪定前、表門からの姿:石燈籠は上半分しか見えません

このクチナシ、なぜ今回お手入れするかというと、成長した枝葉が傍の石燈籠にあたってきたからなのです。このままでは枝葉が石燈籠を傷つけかねません。また、せっかく門をくぐってすぐお庭へのアクセントとなる石燈籠ですので、枝葉で隠れてゲストに見ていただけなくなってはもったいない。
そこで、ちょうどクチナシの花も終わりをむかえ、実の数はそれほど残さなくても問題ないということで、石燈籠が見られるように剪定することとなりました。

剪定のポイントは①石燈籠を適度にみせる、とともに②玄関エリア全体として調和しているか、の2点です。

①の石燈籠の見せ方で調整しているのは、全部見せないということ。

無鄰菴担当庭師の出口さんは、こう話します。
「石燈籠を見せるために、全てさらした状態にする、枝葉で隠さないというのは、少し風情がない感じがします。そこで枝葉が少し被っているという状態を保つように調整しています。石燈籠に限らず、他の石造品の蹲踞などでも、周囲のシダ類を全部とらないようにしています。手入れした感じが分かりすぎないように、自然にみえるように心がけています」

石燈籠にさわっている枝を中心に手入れしていきます

②の玄関エリア全体の調和では、玄関という場所のみせかたが大切なポイント。この日はクチナシのお手入れのみでしたが、手入れする1本が単木で良い状態になるのではなく、玄関全体の植栽の中で調和するように整えていきます。
無鄰菴のお庭の全域どこでも、ゲストの目線の高さにくる中低木の姿は重視しているポイントですが、玄関では境界となる壁が近いため狭い空間であるということも考慮すべき点になります。圧迫感を避けるために枝を透かしすぎると壁が見えてしまう、とは言え壁を気にして枝葉を濃く、樹高を高くすると樹木による圧迫感を与える空間となってしまいます。

一度石燈籠の側で剪定した後に、一旦手を止めて表門に立ちます。ゲストが最初に玄関に立った時にどう見えるのか、目線をずらした時の見え方はどうか、立ち位置を変えては状態を確認し、クチナシの枝葉のバランスを調整しました。

 

お手入れ後の姿。隠れていた燈籠の下半分の形が感じられるようになりました

クチナシの剪定は、これにて終了。夏の間にまた枝が成長するため、秋にもう一度調整する予定です。

ところで、無鄰菴には他にもいくつか石造品があります。 例えば、玄関エリアにある他の石造品。こちらも壁と周りの樹木のバランスを考えて、これまで低木を整えてきました。

また庭のあちこちにある蹲踞(つくばい)。水を張るため清潔感があるようにと、定期的に蹲踞についた苔をはがすようにしています。茶室西側の蹲踞は、1ヶ月ほど前に苔をとったばかり。東側の蹲踞はこれから苔をはがす予定です。

主張しすぎないように、けれどアクセントになるように、石造品たちはそっと庭の景色に魅力を添えています。

 

 

 

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