さらさらとは。無鄰菴の施主 山縣有朋が詠んだ歌「さらくと木がくれつたひゆく水の流れの末に魚のとぶみゆ」にちなんでいます。
無鄰菴を途切れることなく流れるせせらぎのように、ここでの出会いが庭園を未来に育む流れとなりますように、名づけました。
無鄰菴は国の名勝に指定された近代日本庭園を代表するお庭です。
明治29年に元勲 山縣有朋が東山を主山に、当時できたばかりの琵琶湖疏水を引き入れた庭園の基本構想を七代目小川治兵衛に伝え造営しました。
そんな無鄰菴のお庭は、有朋の作庭意図にのっとった保存管理指針のもとに修復や修理が行われています。今回ご紹介するのは、園路の修復です。
歩むごとに景色をかえる無鄰菴のお庭の奥の方、もみじの林に池につづく一本の小径があります。
ここは今まで封鎖され歩くことができませんでしたが、今回の修復で池際まで下りていけるようになりました。
園路の先まで歩いてみれば、庭園の大切な要素がいくつも目に入ってきます。紅葉の季節、もみじにかこまれた新しい景色がまたひとつ、よみがえりました。
庭師のとっておきの紅葉の見方。
そんなことを聞いたら、きっと秋がもっと楽しくなるでしょう。
無鄰菴の母屋から芝地に向かって伸びる園路。その沢とびを越えたあたりにちょっと脇に入る小さな小径があります。通りかかったら奥まで歩んでみてください。そこから庭園の一番むこうの滝をながめると、随分と奥行きを感じる景色が広がります。奥行きの秘密は、滝の前に紅葉が何重にもかさなって枝を伸ばしているから。空間的な奥行きのみならず、幾多の過ぎ去った紅葉の季節という時間の奥行きさえも感じられます。その景色は、一つ一つの枝が景色の中で持つ役割をしっかりとわきまえているからこそ、演出できているのです。これぞ庭師の技。他にも気づけば、手前に紅葉などの枝を配することで、奥行きを感じさせる空間構成がいくつもみられます。これは実は無鄰菴に限らず、日本庭園の庭木を扱う大切な手法のひとつなんです。
秋の日のお庭散策で、ちょっと気にしてみてください。庭園を訪れる楽しみが、また一つ増えました。
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